グラス

40代独身男性に必要なグラスの数は幾つなのだろう。20代は0でした。水も牛乳も酒もコーラもフルーチェも全部1個のドデカマグカップで事足りた。うがいもそれでした。テクノを聴いてましたからね。テクノを聴く人はこの世のあらゆる制限から自由であるべきで、用途によってコップを使い分けるなんてハウスを聴く軟弱者のすることだと思ってました。思ってませんでした。テクノを聴く人はすぐ思ってもないことを口にする。私がテクノを聴くのをやめた理由がそれで、今はハードテクノを聴いています。翻って40代。変換して気付いたのですが「翻って」の漢字って、麻雀の1翻、2翻とかと同じ漢字だったんですね! これは「あなたは捲るのに倍満以上が必要。翻って私は1翻で上がれば終局です」って声に出して言っても中々気づけません。これがセレンディピティ。翻って40代。食器棚を確認したら6個ありました。全然足りない。まず、朝。寝ぼけまなこの萌え袖パジャマで牛乳を飲み干し、使ったグラスをシンクに全力で投げつけ(‐1個。残り5個)た瞬間、持病の薬を飲んでなかったことに気づくも割れたコップは使えませんし、実際投げてないのでコップは無事ですが牛乳を飲んだ後のコップに水を入れて飲むなんて、なんとなく薬の成分に影響ありそうで気が進まない。結局新しいグラスで薬を飲み(-1個。残り4個)、水出しほうじ茶を注ぎなおして作業用デスクに向かうと、そこには昨日使ったグラスが2個(-2個。残り2個)。他にも、付箋、しまい忘れの印鑑、眼鏡拭きシート、試供品の吸う予定のないタバコ、付箋、水道料金の払い込み用紙、芸能山城組のステッカー、体温計、映画虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の入場特典(未開封)、CDの不織布ケース、鷹の爪、センスの哲学、来月行くライブのチケット、1カ月差してない目薬、3カ月飲んでないサプリなど仕事に関係ないものが放置されており、イラっとしますね。そういうのは昨日までの私がしたことで、何故私が他人の後始末をしないといけないのか分からないので、そのまま仕事を始めます。teamsやらslackやらgoogle chatやらが気の触れたかように通知音を鳴らしますので、すべて無視してXとはてブを見ます。Xとはてブを10往復もしますと、仕事をしていない焦燥感で喉が渇くのでキッチンへ向かい、新しいグラスでほうじ茶を飲みます(-1個。残り1個)。ラストのグラスはアイスコーヒー専用の為、夏まで使いません(-1個。残り0個)。

このように、グラス6個では午前中も持たないし、午後以降の給水は未来の私がシンクに溜まった皿ごと片付けてくれる事を祈りながら手でいきます。グラスが足りないのは重々分かっているので買えばいいのですが、私ももう四十と六つ。そんじょそこらのグラスは迎え入れたくない。ニトリやダイソー、セリアには敷居を跨がせない。そんな安物を買うなんて、いったい何のために40年以上生きたと。私はなぜこんなことを主張しているのかと。我に返った。思い出した。書くの楽しい。翻って今。この「翻って」は誤用。グラス。グラスです。たった今、我が家にはグラスが足りないのです。仕事中にグラスが足りないと思い、グラスを洗うでもなくwordpressの画面を開き、5個のグラスを洗う時間の十倍以上の手間をかけて書いて、考えて、書いています。「40代独身男性に必要なグラスの数は幾つなのだろう」について。なんて楽しい。こんな楽しい時間を送れたのです。なので、40代独身男性に必要なグラスの数は、6個。

13g

猫の1回のカリカリの量が13gで、私が飲んでいる珈琲1杯の豆の量が13g。猫と私の共通点はそれぐらいで、その他は何も似ていません。猫は可愛いが私は可愛くない、猫は四つ足で私は二つ足(気分でたまに四つ足)、猫は無職で私は正社員。早く無職になりたい。私は猫を神だと思ってるが、奴は私の事をカリカリ製造マシーンとしか思っていないのでは。差異は無限に挙げられるますが、共通点は「13g」の1点のみ。だから、この重さを愛おしく思います。どこかの卓越した餅職人のように13gを感覚だけで分かるようになりたいですが、それだと私の頭が狂って500gを13gと言い張る日が来てしまったら、猫のご飯入れに一日2kgの餌を入れて「猫がご飯を食べなくなってしまった!」と泣き崩れてしまう。それは凄く悲しい。なので、毎回ちゃんと計量器でピッタリ13g計ります。計量器に映る13gを500gと認識してしまう形で頭が狂ってしまったときの事は後日考えます。ちなみに猫のカリカリ13gは、それ以上だと太りすぎ、それ以下だと持病の悪化が懸念されるので、13gじゃないとダメなのです。豆の13gは、サニーデイの呪いにより「コーヒーを飲むと言う事は熱い濃い珈琲を飲む事だ」と固定概念を植え付けられた氷河期世代の悲哀から生まれた量です。でも熱い濃い珈琲を飲めると言う事は、きっとまだ内臓が老け切ってないと言う事なので、悪い事ではないと思います。やなか珈琲のセンチュリーオールドが好みです。

猫が毎食13gのカリカリをモリモリ食べて、私が13gの豆をガリガリ挽いてズズッと音を立て珈琲を飲む。13gという共通点が支えている健康的な毎日。40歳を超えてから好きな数字が出来るなんて。まるで思春期の学生みたいだ。