ピザ焼き機

テクノは速度の音楽である、と言われます。言われてました。誰かが言ってました。なんかの本に書いてました。これは実際のBPMの話ではなく、あり方や概念としての話で、速くて未来的である事が大事なのがテクノ。BPMが60だろうが、見たことない訳の分からない景色を高速で披露するのがテクノ。ハードコアやスピードコア、ブレイクコアよりもConte De Féesの方が早い。ううん・・・サラマンダーより、ずっとはやい!! きっともう通用しないと思いますが、90年代にテクノの洗礼を受けた身としては腹落ちできる話です。そして、私は早漏です。これはあり方や概念としての話ではなく、実際のBPMの話です。いや、Beats Per Minuteではありませんね。1分未満で終わる曲のBPMなんて正しく観測できない。レコボも落ちる。これから私がするのは秒(second)の世界のお話です。きっと皆さんが体験したことのない次元の話です。怖いですね。でも、実速を測った事はありません。測りたくもありません。もし測ってしまって、その数値を見てしまったら、きっと私は私を終わらせてしまう。でも、多分、ですが、体感で、ですが、Napalm DeathのYou Suffer15曲分ぐらいではないのかな、と思っています。

後学の為に、試しに今度測ってみるのも悪くないかもしれません。でも、ストップウォッチの操作は余計なタイムロスを発生させ正しく測れないので、そうなるとアレクサを使うしかない。終了時に信じられないくらいの大声で「アレクサ! ストップ!!!!」と絶叫するのか。世も末だな。すいません、断っておきますが、シモの話をしたいんじゃないんです。人間についての話をしたいんです。これは、人間の、革命についての話です。人間革命。なので、出来る限り具体的な話はしないつもりです。皆さんを不快にさせたい訳ではない。その上で、速度、という具体的な事について述べたいんです。これは相当困難なチャレンジです。応援してください。一番最後にアマゾンアフィリエイトのリンク張っています。速さ。最近は聞かないのですが、昭和の頃はカップヌードルを使用される方がいらっしゃったようです。私からすると、本当に意味が分からない。お湯を沸かすのに10分弱。お湯を注いで3分。覚ますのに10分強。1分未満の為に、それだけの時間を? コスパ悪ない? そこまでの苦労をし、かつ、本来なら美味しくいただける物なのに、もう何にも使えない。捨てるしかない。あんなに苦労して積み上げたものが、一瞬で台無しに。文明の終わりかよ。抽象度を2段階引き上げましょう。ボートレースの1周タイムの基準は36.5秒だそうです。つまり、全てのボートレーサーは私より格下。基準が雑魚。町田教官がどんだけ頑張っても私を超えるレーサーは育てられないし、モンキーターンつっても私の方がずっと猿。本質的に猿。タイム的に本当に猿に近い。猿のソレについてはウィキペディアなどで調べてください。具体的な話はしませんので。また、速度については年々増している実感もありますので、きっと数年後に光速に至る。そうなると光行差が顕著に発生し、360度すべての景色が前方に集中するので、背中側に動画仮流れるスマホを置いておいても大丈夫。便利。でも、時間の流れも変わり外の風景はすべてスローモーションとなる為、動画は役割を果たさなくなるので意味がないな。そもそも、ここで光速を超える主体は私で良いのだろうか? そして、ここからは恐怖の本質的な部分について触れてしまう話になるのですが、私ですね、この速さについて、何も困ってないんです。生活に何の支障もない。無風。こんなに速いのに。この速さは、誰にも何にも影響しない。この世の因果の外。輪廻の輪からの解脱。遠離一切顛倒夢想。だって、皆さんが一日の1%を占めている事についてですよ? 私は0.02%しか要さないんです。ウフフ。皆さん非効率的。皆さんより、私の方がずっとテクノ。私の方がConte De Fées。私の方がEXTRA。そんな生活にほとほと嫌気がさしたのです。困っていない事に困っている。なんでこんなに困っていないのか。ほら、もうみんなテクノ聴いてない! hyper flipとかばっか! でも、私さっきまで輪廻の輪から外れて解脱してたから、もう自分じゃ何もわからない! 有識者!! 有識者を呼ばないと!

という訳で、「我が家にはピザ焼き機があって、いつでも焼き立てのピザが食べられるんですよ。ほら、釣られてごらん?」と声を掛けたら、有識者が2名釣れました。罠にかかったとも気付かないで。大自然はいつでも貴方達を狙っている。しかし、誰も焼き立てのピザには抗えない。あなた方は生まれながらにしてNYの下水道に住む亀なのですから。ほら、肌も真緑。女性声優と同じシャンプーを飲み過ぎたのね。このド変態! でも、そんな事はおくびにも出さず、相模大野駅に到着する有識者を出迎え、みんなでスーパーで買い物をします。みんなで買い物楽しいね。

マルゲリータ、マリナーラ、サーモンとタマネギのマリネ、サラミ、赤ワイン、オレンジワインを用意し、私はせっせとピザを焼き続けます。有識者たちは宅配ピザでいうSサイズのピザを計8枚も平らげ、良い感じに酒も回り、完全に油断しています。このタイミングしかない。そう思った私がゆっくりと慎重に口火を切ります。

「ところで、私は早漏なんだけど今後どうしたらいい?」

「そんなこと聞きたくなかったです。折角楽しかったのに」
「やめてください。飯が不味くなる」

「何てこと! 貴方達有識者なのに、愚者に対する口の利き方も知らないんですか? いったい何のためのピザ?! 8枚も美味しく食べてくださって! ありがとうございました! でも、こっちはこんなに困ってるんですよ?!」

「あ、でも女性は早漏はあまり気にしないって聞いた事あります」

「誰が女性の話をしましたか?! 私は対人関係において早漏で困ってなんかいないんですよ! 女性なんてこの世のどこにもいないから! じゃなくて、困っていないという現状に困っているんです! なんでわからないかなぁ? 頭、生きてますか? 死ぬんですか? 人間なんて威張っていても、コウナルト ダラシナイモノダネ!」

完全に言い過ぎました。本当に良くなかった。さっきまであんなに楽しかったのに。私のたった一言で全部台無し。誰も喋らなくなった食卓に映画「サスカッチサンセット」のサスカッチ達のウホ声が響きます。あ、交尾シーン。サスカッチの方が私より長いな。しかし、なんでこんなことになってしまったんだろう。私はどこから間違った?

「お開きとしますか」

有識者の言葉に誰も返事をしないまま、みんな上着を羽織り、荷物を持ち、猫に「ニャーン♡」と挨拶をして家を出ます。駅までの案内もあるので私が先頭で、縦一列になりながら無言の軍行です。愚者、有識者、有識者。愚者は愚かなりに考えます。最初だ。最初から全部間違っていた。本当は愚者は早漏という事だってどうでも良かった。みんなとお喋りしたかっただけだった。でも、そんな自分の寂しさを認めたくなくて、早漏なんて理由を引っ張り出しただけでした。ピザを出汁に早漏の相談をしたかったのではなく、早漏を出汁にピザを食べたかっただけだった。誤字ったけど、割と最悪の字面。謝ろう。ちゃんと謝ろう。あの角を曲がったら。駅前のコンビニについたら。駅の階段を昇ったら。改札に着いたら。改札に着いた。改札に着いた愚者は既に号泣していました。

「ご、ごべん゛よ゛ーーー! あ゛ーーー!!!」

愚者は鼻を垂らし大声でわめいて謝ります。有識者たちはその言葉を待っていたかのように微笑んでこう言いました。

「絶対許さない。でも、猫が可愛かったし、ピザも美味しくて部屋の居心地も良かったからまた来ます」

「あ゛じがどーーーー!! あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーー!!!!」

愚者は泣き止むことも出来ず、ひきつけを起こしながら有識者達に全力で手を振ります。そんなの全部嘘で、有識者を駅まで送る途中、ブログで早漏の話を書きたくなったので、急に「俺早漏なんだけどどうしよう?」って話を振って嘘じゃなくしただけの愚者に、改札の向こうの有識者は優しい表情で「また会おうね、愚者」と言い、消えていきました。愚者は、もう誰もいなくなった改札に向かって、ずっとずっと手を振り続けました。