市田という漫画家の「スナック」という1Pの作品が凄く好きです。何気ないスナックの会話で軽やかに描かれる客と店主の距離感が素敵だし、主題の朝食についてもそのチョイスに店主の人となりやその背景が滲み、思わず自分の朝食遍歴を考えだし、読み手側は自分事として記憶に残り、こうして何度も読み返してしまう。あまたあるXの1P創作漫画の中でも、ひときわ輝く名作ではないでしょうか。
そもそも朝食は昼食や夕食に比べて変化が乏しく、平日などはほぼ同じメニューになりがちです。大体、朝というのは人間が一番人間をやれていない時間であり、目覚めた瞬間に遅刻を確信してしまった人や、目覚めてすぐに昨日寝る前に投稿したXのポストのアナリティクスをチェックする(2イイネ)悲しい瞬発力を持っている人を除き、大抵の人は鏡に写った自分に糞を投げつけるチンパンジー以下の判断力しかない。皆さんの洗面台の鏡は大丈夫ですか? そんな状態でバラエティー豊かに朝食を彩るなど根本的に不可能である。なので、皆さんが朝食だと思って用意した皿に糞が乗っていても私は責めない。
そのように、私達は朝食の皿に糞を載せない為に朝の思考リソースを節約しているので、大体毎朝同じものを食べている。しかし、やはり飽きが来る。若い人はそうでもないかもしれない。ですが、深夜アニメを3週続けて観る事さえできないどころか、先週の内容を30字でまとめてと言われているのに「なんか良かった」と7文字しか書けないほど集中力が衰え、もはやオタクとさえも言えない私達は猿以下の判断能力の癖に朝食にさえ飽きてしまう。今期完走は女の子がデスゲームで殺しあう1作品のみで、氷河期世代が観るアニメとして最悪に最適でした。
加えて、健康的な側面からも朝食の変更が発生してしまう。基本、私たちはもう、朝から体を冷やしたくない。冷えた体を恒温に持っていくためにカロリーを消費してしまうと、さらに脳にエネルギーが向かわず、在宅勤務の出社打刻を押し忘れ、人事に「吉川さん打刻修正申請ちょっと多すぎませんか?」とチャットが飛んでくる。「そのぅ、これは朝食が冷たすぎてぇ」と言い訳したいが、来週の査定面談を考えてぐっと堪える。氷河期世代は堪えるしか能がないのだ。
ここ2年ぐらいは、オートミール30g、サンマスカットレーズン7g、クランベリー3gに牛乳100ccをかけたミューズリーを毎日食べていました。オートミールの無を食べている感覚は大変好きで、もしかしてこれこそ悟りでは?と思いながらの朝食を気に入っていたのですが、人事がうるさいので、今、第4次トースト期を迎えています。我が家のトーストはアラジン社のもので、第2次トースト期の時に購入したものですが、一瞬で高温に達するのでパンの水分を適度に維持した抜けず外カリ中モチトーストが焼けるので気に入っています。バルミューダも同じかもしれませんが、私はオタクなのでオシャレなのが憎い。私が不幸なのはオシャレな人達のせいではない。分かっているのです。それでも、何かを憎まないと、生きていけない。人はそういう風に出来ているので、戦争が無くならないし、ロックンロールは鳴りやまない。
故に美味しいトーストが焼ける筈なのに、我が家のトーストは不味い。理由は分かっていて、これは全部ヤマザキパンの小麦の香りが好きじゃないからなのです。大手メーカーの癖に、癖が強すぎる。最大手サークルなのにケモショタ8cm乳輪みたいな事になってる。でも、誰が春のパン祭りに参加しない事を選べるというのか。2カ月でまだ10点しか集まっていないというペースでは、皿が貰える可能性は著しく低いのも分かっています。それでも、我々は祭りに参加するしかなく、故に、戦争が無くならないし、ロックンロールは鳴りやまない。
戦争が無くならないのとロックンロールが鳴りやまないせいで、私の朝食環境はあまり良くなく、お陰で私の一日もちょっと、だいぶ、冴えないものになっています。全部朝食のせいですので、早くミューズリーに戻りたい。パン祭りが終われば、人事考査が終われば、春アニメが始まれば、バルミューダが潰れれば、ロックンロールが鳴りやめば、戦争が無くなれば、きっとまたミューズリーを食べられて、ちょっとだけ私は幸せになれるんじゃないだろうか。そんな事を朝のぼやけた頭で考えながら、トーストをサクリと齧ったのでした。