まくら

目が覚めた瞬間遅刻を確信するように、今日は目覚めた瞬間「私がオタ芸を嫌悪しているのは、その動きやパフォーマンス性が理由ではなく、打っている奴らが送っている青春に対する嫉妬かもしれない」と気付きました。奴ら、真顔だったり笑顔だったりのまま、演者そっちのけで真剣にオタ芸を打っていて、まさに青春。私にはそんな青春なかった。私の青春は6畳もない友人の部屋に8人で集まり、全員でタバコを吹かしながら4人は麻雀、2人はファミスタ、2人はエロゲー、これをローテーションで朝まで繰り返す中学時代と、地元の古本屋をめぐってエロ漫画とエロ同人誌を探し続けた高校時代、テクノ同好会の集いで深夜のダムでレイヴをやって通報された大学時代、それがすべてで、それはそれで美しかったけど、オタ芸打ってる奴等のような輝きは無く、なんていうか、奴等、体育祭で頑張ってる一軍感ある。私はあらゆる一軍に対してのアンチと性欲だけで出来ていて、私からロボトミー的な方法、もしくは、自己啓発的な手法でその憎しみを除くと、パン、と風船のように弾け、中にミチミチに詰まっていた精液が周囲5kmに渡ってまき散らされる。怨念の籠ったその液の臭いはどれだけ掃除しても決して消える事は無く、降り注いだ畑から人間の眼球にそっくりの花が咲き、あなた方一軍を睨みつけます。これが、相模原市南区の終わりです。そこまで一軍を嫌悪しているため、自分が一軍的な位置にいると思った瞬間居心地の悪さを感じ逃げ出してしまう癖に、孤独感は誰よりも強い。毎日寂しくて吐いている。吐けない時は、人差し指と中指を喉奥に突っ込んででも吐いてる。これが吐きダコです(胃酸でボロボロになった指でうさちゃんピース)つまり、全裸にゆるゆるの靴下とそれを支える異常に長いサスペンダーのみ、といういでたちで「アナタガタハナゼ私ヲ愛サナイノカ?」とどの地方の訛りでもないイントネーションで叫んでいるのです。そのせいもあって誰も寄ってこない。だからアマゾンアソシエイトも一件も購入されない。そう思いながら、ベッドから体を起こします。枕には池のようなヨダレの跡。この場に知事がいたら、即、激甚災害指定を国に要請するぐらい臭い。この臭いのせいもあり、最近は物凄く睡眠の質が悪い。3時間くらいで目が覚め、そのあと何回か短い睡眠を繰り返す。最近なんかツラいな、と思いながら枕を干すために持ち上げ、ボタボタボタとヨダレを気にせずベランダに干すと、飛んでいた朝ガラスが臭いで墜死する。世も末だわ。全部政治が悪い。このヨダレでグショグショのテンピュールの枕は、アウトレットで一万円もしたというのに、もうヨダレだけではなく、なんか苦悶の表情を浮かべる顔のような跡もついてる。私の顔か。私はテンピュール枕の特性を無視してうつ伏せで寝るため、枕の盛り上がっている部分がちょうど喉にぶち当たり大変苦しい。その上、睡眠時無呼吸症候群でイビキが凄く、その勢いで宙に浮く。浮きませんし、うつ伏せで寝ません。よだれでグショグショなのは1割くらい嘘で、それよりも低反発素材に染み込んだ加齢臭の方が酷く、もう買い替えるしかない。最近寝つきが悪いのも、全部この枕のせい。普段の私は、本当に30秒ぐらいで寝ついてしまい、そういうタイプのナルコレプシーの疑いがあるですが、最近は妙に眠れず、寝れない事に慣れてないので余計な事ばかり考えてしまいます。孤独死する瞬間の表情をどうするか、とか。興が乗り、練習なんかしちゃったりします。それが枕の顔の跡なんですけど、その他にも、思い出しただけで「あの時!」と叫んで全身の毛が抜けてしまう過去の愚行、例えば20年前のエイジアのメインにレーベル全員で出た時、レーベルの社長と相方がMCで喋って盛り上がっている所を、進行の指示が出たので私が途中で打ち切る形になってしまいフロアが静まり返ってしまった事とか、アソビ関連のイベントのメインステージでB2Bユニットとして出る事になり、まあまあちゃんとやれた後、次のDJのFPMが音を止めてなぜか私にマイクで喋らせにかかって300人以上の前で完全吃音をかましたところを自社の社長に動画で撮られてて翌日全社員にシェアされた事とか、初めての恋人と付き合う前に「こっちは好きなのに、向こうは気が無い癖に戯れで優しくしている」と思い込んで「もう辛いので今振ってください! お願いです!」と懇願して爆笑された事とか、そういった事を思い出した後は、きっと何も属すことが出来ない今後の人生に思いを馳せてしまいます。私は愚かなので、1人でいると、半分受け狙いで口にした最悪の選択をだれも止めてくれなかったせいにして選んでしまうため、それはきっと1軍にも2軍にも3軍にも属せず、人間をやれてこれなかったせいで誰も笑わぬ道化しかできなくなってしまったからだ思うのです。私を止めない1軍は嫌いだ。2軍も3軍も同じだ。「アナタガタハ結局私ヲ愛サナイノダ!」というような事を寝てるわけでもないのに仰向けでヨダレをダーダー垂らしながら独り言で唱えているので、既に枕はグショグショです。そうやって私を徹底的に追い込む客観的な情報をひとしきり捏造しきった後、それでも、と取り出して並べます。

中学生の頃のいつものメンツでの麻雀で危険牌を握ってしまい「助けてくださいブラックジャック先生!」と言って切った友人に跳満ブチ当ててみんなでゲラゲラ笑った夜とか

高校生の頃の同級生達と「あのエロ本屋には東京直送の同人誌があるらしい」という薄っぺらい情報だけで深夜に5キロ歩いて、確かに東京直送の同人誌はあるけど5000円くらいしちゃって結局買えずにまた5キロ歩いて帰りながら誰かが言った「俺らエロ本のために何してんだろうな」って言葉にゲラゲラ笑った夜とか

大学生の頃の深夜ダムレイヴで通報され、注意だけ受けて撤収となり、みんなで機材を片付けながら「でも、警察が来るまでは、なんか嘘みたいに楽しかったね」と言い合った夜とか

エイジアのメインフロアを冷やしたライブの後、関係者席みたいになってた2階のベンチみたいのとこで、DJ急行さんがかけるDaft Punkのone more timeが流れるなか当時の恋人を膝枕しつつ、目の前にいる妙齢の女性のジーンズの臀部を見て「なんか年を取るってこういう事?」という失礼極まりない感想を抱いてたら、膝枕で寝てた恋人から「今お尻見てるでしょ」と言われ、素直に「うん、なんかおばさんのお尻だなぁ、って思ってた」と小声で答えたら、不意に恋人が起き上がってこっちを向き、にっこり笑って「おんなじこと思ってた」って言った夜とか

「辛いので振ってください!」と懇願した女性と付き合えることになってから少し経ち、それでも自分に自身を持てなくて悩んでたら「雨が上がったから自転車で帰ってるんだけど、君の事考えてたら道路がキラキラして見えたよ」って携帯メールが送られてきた夜とか

他にも、

沖縄にマルチネレコーズの皆様をゲストに呼んで大いに盛り上がってるパーティーのピークタイムに80代ぐらいのおじいちゃんが入ってきて素敵なダンスを披露して、みんなで「神様だ! クラブの神様だ!」ってはしゃいだ夜とか

従妹とルームシェアしてる部屋に泊まりに来た恋人と同じ布団に入り、でも従妹も隣の部屋にいるから何をするでもなく、ただハグしながらずっとお喋りをしてて、それが幸せ過ぎてホロっと泣いてしまった私の涙を、悪戯な笑みを浮かべた恋人がそっと舐め「おいしいですね」と言って笑った夜とか

付き合う前の恋人と二人で楽しく飲んだ帰りに「ちょっと公園に寄っていきましょう」と言われ、マンションに囲まれたブランコしかない小さな公園で、並んでブランコに座りながらずっと話し続けて、私ももっとずっと話続けたくて、でも、時間も遅いのでそろそろ帰りましょうか、と言って先にブランコを降りた私に「そうですね」と彼女は答えながらブランコを漕いで、更に何度か漕いで、勢いをつけてブランコを降りて、その勢いのまま私をギュッと抱きしめた夜とか

「あの夜があったから生きていける」夜を並べるんです。10年以上前の、大切な夜。私がみんなと楽しかった、私がきっと優しくされた夜。この先はもう無いかもしれないけど、確かにあった夜を並べたら、私はこれからも大丈夫、と思えて、眠れます。今は、午前5時前。まだ夜明け前。この夜はきっと、誰かの「あの夜があったから生きていける」夜が生まれた夜。だから。ねえ。きっと私達は大丈夫。あの夜と、この夜があるから、眠ってももう大丈夫だし、起きてもきっと大丈夫。

また、朝を迎えましょう。

まくら